【VIVANT】ブルーウォーカーのハッキングは実現可能?シンシーのシステムジャックは可能なのか
『VIVANT』のブルーウォーカーが見せるハッキングは現実でも可能?

ドラマ『VIVANT』に登場するブルーウォーカーは、高度なハッキング技術を駆使し、敵のシステムへの侵入や防犯カメラの操作、さらには巨額の送金に関わる情報操作まで実行します。
パソコンを操作するだけで敵の状況を把握し、システムを利用して形勢を逆転させる。その鮮やかな活躍を見て、「現実のハッカーも、ここまでできるのだろうか」と気になった人もいるのではないでしょうか。
結論からいうと、ブルーウォーカーが見せるハッキングには、現実の技術で実現できる要素があります。ただし、短時間ですべてのシステムを自在に操る描写には、ドラマならではの演出も含まれています。
現実のサイバー攻撃では、システムの弱点を見つけること、不正アクセスを成立させること、必要な権限を得ること、目的の操作を実行することなど、複数の段階が関係します。一つの壁を突破できたからといって、すべてを自由に操作できるわけではありません。
この記事では、敵本部のシステム完全ジャック、HQ-9防空システムへのハッキング、防犯カメラの操作、丸菱商事をめぐる巨額送金という作中の描写を取り上げ、現実の技術と比較します。
敵の本部システムを完全ジャック!所在地の特定から制御まで可能?

作中では、敵の本部システムに侵入するだけでなく、ネットワーク上の情報を手がかりに本部の所在地を割り出し、システムを掌握するような描写が登場します。
遠く離れた場所から、画面上の情報を頼りに敵の拠点を特定する。まるでデジタルの世界から現実の場所まで見つけ出すような展開ですが、実際のハッキングでも同じことができるのでしょうか。
結論からいうと、IPアドレスなどのネットワーク情報から接続先を調べることは現実にも可能です。ただし、IPアドレスが分かれば本部の正確な住所まで特定できる、というわけではありません。
IPアドレスから本部の所在地を割り出せる?
IPアドレスは、ネットワーク上で通信相手を識別するために使われる情報です。インターネット上のサーバーやネットワーク機器などを調べる際の手がかりになります。
IPアドレスに関連する情報から、接続先の国や地域、利用している通信事業者などを推定できる場合があります。しかし、分かる位置情報の精度はさまざまです。企業のサーバーがデータセンターに置かれていたり、通信がVPNやプロキシを経由していたりする場合、IPアドレスから分かる場所と、実際に操作している人や組織の所在地は一致しないことがあります。
例えば、海外のIPアドレスからアクセスがあったとしても、その場所に本部や攻撃者がいるとは限りません。IPアドレスが示すのは、あくまでネットワーク上の手がかりです。
ネットワーク情報を組み合わせれば、拠点の特定につながることも
所在地を調べる際には、IPアドレスだけでなく、公開されているドメイン情報やサーバーの構成、ネットワーク上で確認できる情報などが手がかりになることがあります。
ただし、こうした情報から分かるのは、主にネットワークやシステムに関する情報です。実際の建物の位置や、そこに誰がいるのかまで、必ず特定できるわけではありません。
ドラマでは、情報を分析した結果が本部の所在地という分かりやすい形で示されますが、現実には複数の情報を照らし合わせ、推定の確かさを慎重に判断する必要があります。
所在地を特定することと、システムを完全に掌握することは別
仮に本部のネットワークにつながるサーバーや接続先を特定できたとしても、それだけで内部システムを操作できるわけではありません。
サーバーへのアクセスには、認証やアクセス権限などの仕組みがあります。さらに、情報を管理するサーバー、社員が使うパソコン、防犯カメラ、入退室管理などが別々のネットワークで運用されている場合もあります。
つまり、ネットワーク上の所在地を調べること、システムへ侵入すること、管理者権限を得ること、複数の機器を制御することは、それぞれ異なる段階です。
HQ-9の防空システムをハッキングできる?

『VIVANT』では、ブルーウォーカーが中国の防空システム「HQ-9」に関わるハッキングを仕掛けます。では、現実の技術者が同じことに挑戦するとしたら、どのような技術を使い、何を突破しなければならないのでしょうか。
防空システムのような高度な制御システムを対象に考える場合、ポイントになるのは、ネットワーク、ソフトウェア、通信、制御装置という複数の技術領域です。
1.まずはネットワークの構造を把握する
最初に必要になるのは、システムがどのような機器で構成され、機器同士がどのようにつながっているかを理解することです。
一般的なネットワーク調査では、IPアドレスや通信経路、利用されているサービスなどの情報を手がかりに、システムの構成を把握します。ただし、外部から確認できるネットワーク情報だけでは、内部の機器や制御システムの全容までは分かりません。
軍事システムでは、外部ネットワークと内部の制御ネットワークが分離されている可能性もあります。その場合、外部から接続できる機器を見つけることと、制御システムにアクセスすることの間には大きな隔たりがあります。
2.ソフトウェアの脆弱性や設定上の問題を調べる
次に考えられるのが、システムを動かすソフトウェアに脆弱性がないか、アクセス権限や設定に問題がないかという点です。
セキュリティ技術者は、許可された検証環境でソフトウェアの動作を分析したり、入力データに対する処理を調べたりして、想定外の動作が起きないかを確認します。脆弱性が見つかれば、どの機能に影響するのか、どの程度の権限が必要なのかを評価します。
ただし、脆弱性が存在することと、それを利用してシステムを乗っ取れることは同じではありません。閲覧できる情報が増えるだけなのか、設定変更まで可能なのか、制御機能に影響するのかによって、技術的な意味は大きく異なります。
3.通信の仕組みと、装置側の安全確認を理解する
防空システムでは、レーダー情報や指示など、機器間でやり取りされる情報が重要になります。そのため、通信データがどのように認証・検証され、受信した装置がどの条件で指示を受け入れるのかが、システムの安全性を左右します。
仮に通信内容を読み取れたとしても、それだけで正規の指示を装うことができるとは限りません。通信の認証、データの整合性確認、操作権限の検証など、複数の仕組みが関わるためです。
また、画面に表示される情報を変更することと、実際のレーダーや発射装置を制御することも別の問題です。画面上の情報だけを扱える状態では、実機の動作を変えられるとはいえません。
防犯カメラの映像を切り替える!遠隔操作は現実でもできる?

敵の拠点で動く人々を把握したり、監視をかわしたりする場面では、防犯カメラの映像が重要な役割を果たします。映像を切り替えたり、監視状況を操作したりする描写は、ハッキングのイメージとしても分かりやすいものです。
このような操作は、現実の技術でも可能なのでしょうか。
ネットワーク対応の防犯カメラは遠隔管理できる
現代の防犯カメラには、ネットワークを通じて映像を確認したり、設定を変更したりできる製品があります。管理者が離れた場所から複数のカメラを確認できる仕組みも、実際に利用されています。
このような機能は、施設の管理や防犯に役立つ一方、認証情報の流出やソフトウェアの脆弱性などがあると、不正アクセスのリスクにつながります。
例えば、管理用アカウントが第三者に奪われれば、本来は権限のない人が映像を閲覧できてしまう可能性があります。設定や機器の構成によっては、映像以外の管理機能にも不正な操作が及ぶおそれがあります。
映像を見ること、表示を変えること、記録を改ざんすることは別
ドラマでは「カメラを操作する」という一言で表現されることがありますが、現実には複数の異なる操作があります。
映像を閲覧する: カメラや録画システムから映像を確認する。
表示を切り替える: 管理画面などで、表示するカメラや映像を変更する。
カメラの設定を変更する: 対応機器で、許可された設定を変更する。
録画データを改ざんする: 保存された記録そのものに不正な変更を加える。
これらは同じではありません。映像を閲覧できたからといって、録画データを自由に改ざんできるとは限りません。また、カメラ本体の機能や録画システムの構成によって、可能な操作も異なります。
丸菱商事の約100億円規模の不正送金!送金システムを改ざんすることは可能?

『VIVANT』では、丸菱商事から約1億ドル、日本円にして約100億円規模の資金が不正に送金される展開が描かれます。巨額の資金がコンピューター上の操作によって動くという、サイバー攻撃の恐ろしさを感じさせる場面です。
では、現実に同じことを実現しようとした場合、技術的には何が必要になるのでしょうか。
1.最初の壁は、送金システムにどこまでアクセスできるか
企業の送金業務では、取引情報を管理するシステムや、振込データを作成する仕組み、銀行との接続に使うシステムなどが関わります。これらがどのように連携しているかは、企業のシステム構成によって異なります。
仮に社内のコンピューターへ侵入できたとしても、送金に関する情報を閲覧できるだけなのか、振込データを変更できるのか、承認や銀行への送信まで操作できるのかによって、可能なことは大きく変わります。
技術的に考えるなら、注目すべきなのは「システムに入れたか」だけではありません。侵入したアカウントやプログラムに、どのような操作権限が与えられているかという点です。
2.送金データの金額や振込先を書き換えたらどうなる?
送金処理では、振込先、金額、取引番号などの情報がデータとして扱われます。そのため、送金に使われるデータが不正に変更された場合、意図しない取引につながる危険があります。
ただし、データを書き換えられたからといって、必ずその内容で送金が実行されるわけではありません。システムによっては、取引内容の整合性確認や、変更履歴の記録、送金データの再確認などが行われます。
また、入力画面に表示される情報と、実際に銀行へ送信される情報が同じとは限りません。画面上では正しく見えていても、処理の途中で別のデータが使われていれば、確認すべき点は画面表示だけではなくなります。
こうした問題を防ぐためには、画面上の情報だけを信用せず、取引データの整合性や変更履歴を確認できる設計が重要になります。
3.システムを操作できても、承認を突破できるとは限らない
巨額の送金で重要になるのが、承認の仕組みです。企業の資金管理では、担当者が振込データを作成し、別の担当者が内容を確認して承認するなど、複数人で処理を確認する体制が設けられることがあります。
この場合、ひとつのアカウントを操作できても、それだけで送金が完了するとは限りません。送金の作成権限と承認権限が分かれていたり、登録済みの振込先と異なる取引に追加確認が必要だったりするためです。
技術的な観点では、こうした権限の分離が適切に設計されているかが重要です。ひとつのアカウントに多くの権限が集中していると、不正利用された際の影響が大きくなる可能性があります。
一方で、複数人の承認があっても、承認者が不正な内容に気づけなかったり、承認用のアカウントまで侵害されたりすれば、対策が十分に機能しない場合もあります。
ブルーウォーカーのような技術を活かす仕事「ホワイトハッカー」とは?

『VIVANT』のブルーウォーカーは、高度なハッキング技術を駆使して、システムへの侵入や情報の操作を行う人物として描かれています。こうした技術を現実の世界で、サイバー攻撃から企業や社会を守るために活用する仕事があります。それが「ホワイトハッカー」です。
ホワイトハッカーは、コンピューターやネットワークの知識を使って、システムにセキュリティ上の弱点がないかを調べ、サイバー攻撃による被害を防ぐ専門家です。ドラマのように侵入する技術を扱うこともありますが、その目的はシステムを破壊したり、不正に情報を盗んだりすることではありません。弱点を発見し、攻撃される前に対策することが重要な役割です。
ホワイトハッカーは実際に何をする仕事?
ホワイトハッカーの仕事は、単にプログラムを書いたり、コンピューターを操作したりするだけではありません。攻撃者の視点でシステムを調べ、どのような問題が起こり得るのかを分析し、改善につなげます。
たとえば、次のような仕事があります。
- システムの弱点を見つける:Webサイトや業務システムを調査し、不正アクセスにつながる脆弱性がないかを確認する。
- 攻撃を想定した検証を行う:許可を得た環境で実際の攻撃手法を模したテストを行い、どこまで影響が及ぶ可能性があるかを調べる。
- サイバー攻撃の原因を調査する:不審な通信やシステムの記録を分析し、侵入の経路や被害の範囲を明らかにする。
- セキュリティ対策を提案する:発見した問題を報告し、設定の変更やプログラムの修正、認証方法の改善などにつなげる。
ホワイトハッカーを目指すには、どんな知識が必要?
ホワイトハッカーを目指すなら、まずはコンピューターやネットワークの基本的な仕組みを理解することが大切です。そのうえで、プログラミング、OSの操作、情報セキュリティ、脆弱性への対策などを段階的に学んでいきます。
特に重要なのは、目の前のツールを操作するだけでなく、「なぜその問題が起きるのか」「どうすれば防げるのか」を自分で考える力です。同じツールを使っていても、システムの仕組みを理解しているかどうかで、調査や分析の深さは変わります。
よくある質問
Q. ハッキングは本当に数秒で完了することがありますか?
条件がそろっていれば、短時間で不正アクセスが成立するケースはあります。ただし、対象の調査から侵入後の操作まで、すべてが数秒で終わるとは限りません。システムの構成や防御策、攻撃の目的によって必要な時間は異なります。
Q. 防犯カメラは簡単に乗っ取られますか?
必ずしも簡単に乗っ取られるわけではありません。カメラの機能やネットワーク構成、パスワードの管理、ソフトウェアの更新状況などによってリスクは変わります。適切な認証やアクセス制限、更新管理などが重要です。
Q. 軍事用の防空システムもハッキングで無力化できますか?
軍事システムへのサイバー攻撃は現実の安全保障上の課題ですが、特定の防空システムを外部から侵入して確実に無力化できるとは断言できません。システムの構成や防御策、攻撃が成立する条件などを考える必要があります。
Q. 未経験からセキュリティエンジニアを目指せますか?
未経験から学び始めることは可能です。まずはコンピューター、ネットワーク、プログラミング、情報セキュリティの基礎を学び、演習を通して知識を実践につなげていくとよいでしょう。必要なスキルや資格は、目指す職種や担当業務によって異なります。
ホワイトハッカーを目指すなら?IT・AIを専門的に学ぶ選択肢

ホワイトハッカーを目指すには、プログラミングやネットワークなど、ITの基礎知識を身につけることが大切です。
日本工科大学校のAI工学部では、ITやAIに関する知識・技術を基礎から総合的に学べます。ブルーウォーカーのような高度な技術に興味がある方は、ITを学ぶことから将来の可能性を広げてみてはいかがでしょうか。
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